週刊東洋経済 2018.1208号より。資産価値が急落 老朽化の恐怖 築40年超に終末期が迫る 「廃墟マンション」の実態 高齢化・管理不全・空き屋増加

投稿日:2019年02月22日 作成者:福井英樹 (440 ヒット)

 建物と住民の2つの「老い」で朽ちていくマンション。生活を脅かすスラム化の危機は人ごとではない。
 高齢化・管理不全・空き屋増加
 築40年超に終末期が迫る
 「廃墟マンション」の実態

 千葉県船橋市にある築48年、1098戸の大規模団地。ガタンガタンとカートを引きずる音を立てながら、80代の女性が階段を下りてきた。足も引きずっている。1カ月前から神経痛が悪化し、バスで病院に向かうところだと言う。
 「空き屋が増えて若い人は入ってこないね。なにしろ移動が不便だから」。最寄り駅からバスで20分以上かかるうえ、5階建てだがエレベーターがない。団地内の商店街は、ほぼシャッターが閉められ、人気がない。住民の高齢化に加え、近年空き家も増加。特に不便な上層階は持ち主が手放すことが多い。建設当初から住む女性(70代)は言う。「ここは老人村」。
 外壁は半世紀近い年月を感じさせない。が、排水管は一度も取り替えたことがないという。上下が空き家になると余計にさび付き、ものが詰まると住民は嘆く。古いマンションに共通するのは、見た目より内側の崩壊だ。外壁の塗り替えや屋上の防水工事はできても、排水管の改修は構造上困難を極める。古くなれば破裂の危険性があり、時限爆弾を抱えている状態だ。
 同団地の一部屋を買い取ったことがある地元の不動産業者は、「リフォーム代がかかりすぎて、売っても正直利益が少ない」と漏らす。一部屋50平方メートルほどの広さだが、現在最低100万円台でたたき売られているような状態だ。
 こうした老朽化や高齢化、空き家の増加が深刻なマンションは、郊外だけではない。これからの人口減少で打撃を受けるのは、むしろ人の多い都市近郊である。
全国の築40年以上のマンションは2017年末現在で72.8万戸。それが10年後には約2.5倍、20年後には5倍に増える見込みだ。古いマンションでは、所有者不明も深刻化している。国土交通省が16年に管理組合に実施した調査によると、連絡先不明または所有者不明の物件があるマンションは、13.6%を占める。富士通総研の米山秀隆主席研究員はこう話す。
 「高度成長時代には大量供給を急いだマンションは、施工不良や管理状態の悪さで寿命が短い。築40年を超えると空室や賃貸が増え、さらに所有者不明の部屋があれば管理費を徴収できないうえ、周りも悪影響を及ぼす」
 立地がよい都市でも、現にスラム化が起きている。
 横浜市神奈川区、最寄り駅から徒歩10分ほどの所にある5階建てのワンルームマンション。築35年だが、それ以上に古く見える。ベランダの手すりはさびだらけ、避難用のハッチは壊れて下に開いたままだ。建物横のスペースや中の廊下には、自転車や家電などのゴミが放置されている。廊下の壁は漏水で崩れかかり、電球はところどころ切れている。通常12~15年おきに行われる大規模修繕は、一度も実施されていない。現在、修繕積立金は700万円ほどあるというが、老朽化の状態から脱するにはとうてい足らない。
 このマンションが抱える問題は、管理組合の機能不全だ。途中まで管理していた会社が倒産。以降住民の自主管理が続いた。4年前から新たな管理会社に委託しているものの、荒廃ぶりは改善されない。その最たる要因は、所有者の無関心だ。賃貸率が高いため、「家賃さえもらえればいい」という非居住者オーナーが多い。老朽化マンションに詳しい管理会社「横浜サンユー」の利根宏宏之氏はこう話す。
管理不全の原因は、高齢化による理事の担い手不足が一つ。もう一つが住民の無関心だ。マンション管理組合の機能不全は、会社に社長がいないのと同じ。管理会社に委託しても、指示系統がなければ自発的に動くことはない」
 分譲マンションは法律上、全区分所有者による管理組合が必ず存在する。しかし、「管理規約がない」「総会が開かれない」「修繕の長期計画がない」など、活動実態がなければ、このマンションのように荒廃の一途をたどる。

 組合の分裂で修繕不可能
 競売で治安悪化が進む

 スラム化寸前で奇跡的に建て替えが決まったマンションもある。
 神奈川県小田原市。JR小田原駅の目前に立つ通称「新幹線ビル」は、13階建てで89戸の分譲住居を有する。6年前、駅前の再開発にも携わる地元企業「万葉倶楽部」が一部を買い取ったことを好機に再生が進み、今年11月、建て替えの決議に至った。
 同マンションは長年にわたって荒廃が進み、住民の生活を苦しめていた。要因の一つは、低層階が飲食店などの店舗で上が住居になっている”げたばき”と呼ばれる構造だ。75年、神奈川県住宅供給公社が等価交換によって建設。初代の管理組合理事を務めた平野毅さんは、「地元有名企業のサラリーマンが購入する高級マンションだった」と当時を振り返る。
 しかし、元の地権者が所有していた店舗部は当初から管理費の支払いがなく滞納が続いた。そのため住宅部だけの組合を設立し、店舗部と分けて管理運営を行ってきた。が、分離した下の店舗部には工事の足場を架けられず、大規模修繕は不可能。ベランダのコンクリートが崩落して破片が道路に落下するほど危険な状態となった。
 治安の悪化による住民離れも起こった。27年前、店舗が競売にかけられたことを機に、住居部にも風俗店の事務所が入り込むようになった。小田原市から耐震不足による改善通知も受けていたため、万葉倶楽部が買い取ったときには、半分近くが空き家状態になっていた。
 同マンションの再生に携わるマンション管理士の水谷文彦氏は、「店舗が入っているマンションは、権利関係が複雑化し、合意形成がしにくいため建て替えや管理運営が難しい」と指摘する。
 管理組合が機能しているように見えても、静かに崩壊が進むマンションもある。
 KAIライフサイクルマネジメント代表の管純一郎氏は、大規模修繕工事に携わった東京都江戸川区のマンションで、3年間のうちに11人の孤独死を目の当たりにしたという。部屋には空き缶や弁当箱が積み上げられていた。
 空き家問題に詳しい東京情報堂の中川寛子氏は「区分所有法で管理可能なのは共有部のみ。ゴミ屋敷化しても専有部には口出しできない。また死亡や介護施設に入ったきり戻らないなどで、相続人の連絡先がわからないケースも生じる」と指摘する。
 管理不全マンションを問題視する東京都は今年、適正な管理を促す条例の策定に乗り出した。その素案は、管理組合へ5年ごとに管理状況の報告を求め、管理不全の兆候があれば指導に踏み込む、というものだ。しかし、行政介入には限界がある。「マンション管理士などの専門家が入っても、住民に責任感が芽生えなければ持続性はないだろう」と前出の菅氏は言う。
 マンションの延命には、住民の自助努力が大前提。そして息絶えるときも、自然消滅とはいかない。最期を看取るのもまた住民自身なのだ。(週刊東洋経済 本誌:井艸恵美)
以上、週刊東洋経済20181208号より。

 日管連の瀬下副会長はその著書「依頼が殺到するマンション管理士の仕事術」住宅新報社刊の中で、以下のように述べられています。

マンション管理士が活躍する場
 新築マンションの広告などをみていると、都心に立地するタワー型マンションや、大規模マンションなど、華やかな物件に目を奪われがちですが、マンション管理士が本当に求めれれている場所は、言い方を変えれば、マンション管理士の活躍する場所は、そうしたところではないと、筆者は考えています。管理業者にも見向きもされないような、古く、小規模な、マンションの中にこそ問題を抱えて困っているところが少なくないのです。
 例えば、古い小規模マンションで、十分な管理資金を捻出できないような場合、管理業者に全面委託することもできません。そうしたところでは、そのまま区分所有者があきらめてしまい、最終的には、スラム化してしまう可能性すらあります。
 そのようなマンションの、自主管理のお手伝いができるプロのマンション管理士が、1人でも多く誕生することを願ってやみません。
以上、「依頼が殺到するマンション管理士の仕事術」瀬下義浩著 住宅新報社刊より。

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