講演要旨 1/24日管連合同研修会 「管理不全」管理士3人が事例報告 

投稿日:2019年02月20日 作成者:福井英樹 (284 ヒット)

  一般社団法人日本マンション管理士会連合会(日管連、親泊哲会長)が1月24日、「管理不全」をテーマに行った合同研修会。今回は大久保和夫・田邊実氏による事例報告を。当日配布された資料や両氏の報告を基に内容を再構成し、講演要旨として、紹介します。

 管理組合の設立支援  大久保 和夫
 大久保氏は、管理組合がないマンションで自身が関わった管理組合立ち上げ支援事例を二つ紹介。こうしたマンションにおける対応策やポイントなども提示した。
 事例① 商業地に隣接する店舗併用型
 築49年。7戸+店舗併用住戸1。等価交換方式で建設、分譲された。
 修繕積立金制度はなく、修繕経費は旧地主がその都度徴収していた。大規模修繕は行われず、屋上から雨漏りが発生した。
 旧地主の高齢化に加え、住戸の転売で賃貸化が進んだ点から、管理組合設立の機運が高まり、東京都マンション管理士会に管理士紹介の依頼があった。
 このマンションでは管理組合設立・管理規約策定に加え、屋上防水工事も実施したが、その後、管理は停滞気味で、当面の問題対応から先に進めない状況が続いている。
 区分所有者以外も役員になれるよう資格要件を緩和したが、旧地主以外に組合業務を担当できる人がおらず、区分所有者が外国人に代わり、感覚の違いも生じている。
 
 事例② 住宅地域内の公園に隣接する居住専用型
 築39年。4戸。親戚や近所の知人らによる共同建築で、相互信頼関係を基礎に長年管理業務を行ってきた。
 ただ、世代交代や賃貸化の動きがあり、住民が「終活」として管理ルールを明確化しておこうと、管理組合設立を企画するようになった。
 マンションの規模を考慮し、ルールはできるだけ簡素なものにした。理事会は設置せず管理者と監事のみ設置、修繕積立金と管理費を一括経理、といったルールを採用した。
       ◇
 大久保氏は、管理組合設立には「組合を立ち上げ、明確なルールに沿って良好な環境を維持しよう」という区分所有者の意識が不可欠だ、と指摘。管理規約などのルールはマンションに実態に即していること、区分所有者が内容を理解し運営を継続できるものであることが大切だと述べた。ただ、管理規約を策定し、組合を立ち上げても、その通り運用できるかは「プレーヤー次第」だとも。
     
   行政関与の必要性提示も

 マンション管理士として、どこまで踏み込んでいけるか、第三者管理者制度を活用しても、どこまで改善できるか、といった問題も提起した。
 大久保氏は「管理不全とならないためには管理組合の存在が最低条件」とし、管理組合がないマンションへの対応策として「行政の関与」を挙げた。
 管理組合の機能を発揮するためのセミナーや講習会は行われているが「組合不在のマンション対策事例が少ない。そもそも組合不在のマンションに『セミナー開催』の情報が届くだろうか」と、課題を指摘。課題をクリアするには「行政の問題意識が不可欠」だと述べ、行政による「地域内のマンションの現状把握が必要」と訴えた。
 具体的には管理条例を策定して現状把握を行い、「保有情報を活用して管理組合がないマンションを随時訪問・調査等を行うのが最も有効だと思われる」と述べた。

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 管理不全投資用マンションへの支援事例   田邊 実氏

 田辺氏は、自身の支援事例から投資用マンションにおける管理不全の類型を示した。投資用では「管理者を巡るさまざまな問題が起こりやすい」とし、人的問題が管理不全に陥る原因になり得る、との観点を示した。
 田邊氏が示した類型は管理者指定席型・理事長指定席型など4パターン。各パターンの問題点と対応手段を報告した(表省略)
 報告は「理事長指定席型」の問題点と改善に至る経緯が中心になった。

   「理事長指定席型」の問題提示

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  ※編集部注・田邊氏が報告した「理事長指定席型」のマンションは分譲業者がコインランドリーや倉庫、管理事務室などを自身の名義で専有登記する一方、管理者に就任していた。この分譲業者は、ほかの自社分譲投資用物件でも管理者に就任していたが、その後経営破綻。10年ほど前に分譲業者を買収した企業のグループ会社(A社)が管理者の地位を引き継いだ、という事情がある。
    ◇
 A社は、約400件に及ぶマンションで①管理組合の法人化と「理事長指定席型」への変更を推進②全物件共通の管理規約を新たに策定③全物件の理事・監事にA社社員ら同一人物が就任④新しい管理規約では監事を含む理事にはA社の推薦が必要と規定ーなどの措置を取り、このマンションでも承認された。
 だが、これだと一般区分所有者はA社の推薦がないと理事になれず、理事選任権を事実上A社が持つことになる。多くの管理組合理事を兼務するためか、理事長等は総会に出席せず、管理会社社員も理事になり総会議長を含む理事長業務を代行する、総会議事録を配布しない、といった問題も出てきた。
 管理面でも①理事会の対応が鈍い②工事費が高くなる③監事の公平性などに疑問があり監査機能が不十分ーなど、管理不全を招きかねない懸念材料があった。
 また、このマンションでは特に支援が必要となる理由があった。
 オーナーの年齢層が全体的に高く管理組合運営に
関心を持つ組合員が少ない、投資用などで「管理が悪いのは当たり前」という先入観、不在オーナーが多数で役員を務めるのは迷惑、などといった問題があったからだ。
 ここでは8年前、4人の区分所有者有志が「独立を求める会」を立ち上げ、理事長の解任を請求したり、管理会社の変更、有志ら一般組合員の理事就任と管理規約の変更などを実現するための改善活動を行ってきた。田邊氏はアドバイザーとして会に参加している。
 活動では、まず管理会社の変更を実現した。変更に必要な過半数の票を得ようと、いわゆる「5分の1総会」の請求を1年半近く繰り返し行い、賛成者を増やし、最終的には8割以上の賛成票を獲得できた。管理会社変更に伴い、総会議事録は配布されるようになり、総会での理事長代理も廃止となった。
 続いては理事就任。総会で一般組合員を理事に選任し、A社に推薦するよう求める議案を可決した。A社は当初推薦を拒否したが、その後翻意し、理事と監事の就任を認めた。
 管理規約の変更は未実施だが、理事長の交代にも成功し、「独立」が達成できるめどが付いた。
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 田邊氏は「今後高齢化に伴い、『第三者管理』の導入が増えると思われるが、安易な規約改正で外部管理者の管理を許すと、元に戻すには大変な努力が必要になる」と指摘。
 「規約を変更するには慎重な対応が必要と思う」と感想を口にした。

以上、マンション管理新聞第1096号より。

 日管連の瀬下副会長はその著書「依頼が殺到するマンション管理士の仕事術」住宅新報社刊の中で、以下のように述べられています。

マンション管理士が活躍する場
 新築マンションの広告などをみていると、都心に立地するタワー型マンションや、大規模マンションなど、華やかな物件に目を奪われがちですが、マンション管理士が本当に求めれれている場所は、言い方を変えれば、マンション管理士の活躍する場所は、そうしたところではないと、筆者は考えています。管理業者にも見向きもされないような、古く、小規模な、マンションの中にこそ問題を抱えて困っているところが少なくないのです。
 例えば、古い小規模マンションで、十分な管理資金を捻出できないような場合、管理業者に全面委託することもできません。そうしたところでは、そのまま区分所有者があきらめてしまい、最終的には、スラム化してしまう可能性すらあります。
 そのようなマンションの、自主管理のお手伝いができるプロのマンション管理士が、1人でも多く誕生することを願ってやみません。
以上、「依頼が殺到するマンション管理士の仕事術」瀬下義浩著 住宅新報社刊より。

関連記事はマンション管理新聞第1095号参照
 

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