判決確定後 違法な請求を継続 管理組合の不法行為を認定 区分所有者4人に 賠償金支払い命じる 1/29 東京高裁

投稿日:2024年03月21日 作成者:福井英樹 (512 ヒット)

管理費・修繕積立金の負担割合を巡る裁判で勝訴が確定したのに判決に従わず、支払い義務のない違法な請求を続けているのは不法行為にあたるなどとして、群馬県に建つリゾートマンションの区分所有者4人が、管理組合法人と新旧の代表理事に1人当たり30万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が1月29日、東京高裁で言い渡された。関泰士裁判官は管理組合側の不法行為を認め、1人10万円、計40万円を管理組合法人に支払うよう命じた。判決は確定している。

このマンションでは管理費・修繕積立金が住戸のタイプごとに定められていたが2017年、専有部分の床面積に応じて算出した場合と比べると金額が高すぎるとして原告区分所有者ら計5人が管理組合法人を相手取り、同割合に応じて算出した金額を超えて納めていた管理費・修繕積立金の返還を求めて提訴した。

1・2審とも区分所有者側が一部勝訴し21年3月、最高裁が上告棄却・不受理を決定。

管理組合法人に床面積に応じて算出した金額を超えて徴収した分の返還を命じ、また管理費等の支払いについて、同割合に応じて算出した額を超える支払いに債務が原告区分所有者側にないことを認めた判決が確定した(2021年12月5日付第1189号に裁判の詳細)。

ところが、管理組合側は判決確定後も区分所有者に返金せず、判決を無視し従来通りの金額で管理費等の請求を続けた。

最高裁決定の4カ月前、20年11月に従来と同額の管理費等を納めることで総会の承認を得たため「同日以降の請求に問題はない」というのが管理組合側の理屈だった。

その後、区分所有者に返金は行ったが、従来通りの金額の請求は続いた。

この間、原告区分所有者は繰り返し抗議を行ったが改善されず。

また他の区分所有者に原告を非難する書面を送付するなどの行為もあったため勝訴した5人のうち4人が22年、「多大な負担を経て勝ち取った司法救済の実効性を損なわれて徒労感にさいなまれるなどし平穏な生活を送る権利を侵害された」とし不法行為に基づく慰謝料として1人当たり30万円の支払いを求めて提訴した。

判決ではまず、管理組合側が従来通りの請求を続けている点について「前訴判決に抵触する行為」だと指摘。

係争中、管理費等の額について総会で承認を得ても「請求は正当化されない」と言及した。

総会決議について関裁判官は▽1・2審判決は管理規約を違法と認定するものではない▽専有部分に応じた費用負担では利害の衡平制に欠けることは当然ーといった、総会時の管理組合側の説明や議案書の記述を「判決と異なる独自の見解をさも当然であるかのように述べた」と批判。

このため、他の区分所有者が判決の内容を正しく認識し、判決が指摘した「不均衡や格差を真摯に受け入れて総会決議に臨んだということはできない」と述べ、総会で承認された管理費等の定めのうち確定判決が認定した金額を超える部分は「区分所有法30条3項・民法90条(公序良俗)に違反し無効」だと認定し、管理組合の主張は「法律的根拠を欠く」と述べた。

その上で原告側が再三請求をとめるよう求め、請求を続けるなら法的措置を取る旨警告したにもかかわらず請求を継続した、また判決確定後、原告を非難する文書を区分所有者に送付した、などといった管理組合側の行為は「原告に対する不法行為となる」と結論づけた。

関裁判官は、「判決で採用されなかった見解に固執し、組合員に不実の説明をするなどの手段もいとうことなく、前訴における紛争を実質的に蒸し返そうとするものと言われてもやむを得ない」と管理組合を厳しく批判している。

以上、マンション管理新聞第1264号より


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