判例トピック 管理費等㎡当たり負担額 住戸で違い 最大2.7倍以上の差 『過払い分』の返還求め提訴

投稿日:2021年12月15日 作成者:福井英樹 (748 ヒット)

3月に区分所有者側の勝訴が確定 群馬のリゾートマンション

管理費・修繕積立金の負担割合が住戸のタイプによって異なる群馬県のリゾートマンションで、区分所有者5人が、これまで管理組合に収めた管理費等のうち過去10年分を対象に、専有部分の床面積割合に応じて算出した金額を超える分を「不当利得」だとし、返還を求め管理組合を提訴する事件があった。専有部分の床面積割合に応じて算出した金額を超える管理費等を収める義務がないことの確認も求めた。裁判は1審・控訴審共に区分所有者側が勝訴。今年3月、最高裁が上告棄却・不受理を決定し、確定した。

判決文などによれば、このリゾートマンションは今年で築約40年。分譲終了までに時間を要し、管理組合の設立総会が開かれたのは27年前。

26年前に改正された管理規約では管理費・修繕積立金の「管理費等」の負担について「各区分所有者の共有持ち分」、つまり専有部分の床面積割合に応じて「算出する」と定められたが分譲時に業者が決めた金額は同規定とは異なっっていた。規約改正後も管理費等が共有持ち分に応じて算出・徴収されることはなかった。

管理費等の負担額は専有面積で区分した39タイプある住戸ごとに決められている。規約改正時、専有面積約105平方メートルの住戸では1平方メートル当たりの管理費負担額が約213円だったのに対し、約19平方メートル住戸では約583円と2.7倍以上の差があった。

結局この規定は2004年に削除。「管理費等の額については別表の金額を負担する」と条文が変更され、負担割合に関する規定は消滅した。

別表に示された管理費等の月額は、この時点では規約変更前と変らなかったが、その後管理組合は3回にわたって別表を変更。14年の変更では修繕積立金、16年の変更では管理費・積立金が一定程度の割合で値上げされた。

こうした経過をたどる中で、新しくマンションを購入した区分所有者らが管理費等の負担割合の不衡平制を指摘。最終的に新築時からの区分所有者を含む計6人が04年の規約改正を決めた総会決議、また変更後の規約無効を主張し17年、さいたま地裁に提訴した。

改正前の管理規約の規定に基づき、専有部分の床面積割合によった場合の管理費等を算出し、この金額を超えて収めてきた管理等のうち時効に掛からない過去10年分の返還を求めた。

同割合に応じて算出した金額を超える管理費等を収める義務がないことの確認も求めた。

「床面積割合」超える分、不当利得と認定「明らかに不均衡」

裁判で区分所有者側は、変更した規約は区分所有法30条3項・民法90条に違反し無効だなどと主張(下表の参考条文参照)。「1平方メートル当たりの管理費等の金額について最大で2.7倍もの格差を生じさせるもの」とし、「利害の衡平が図られていない」と指摘した。

規約変更前から管理費等の負担割合は床面積に応じたものではなかったが、規約の変更前なら「共用持分に応じて算出される管理費等の金額を超える部分」について管理組合からの請求を「拒否できる地位にあった」と言及している。

管理組合側は「管理費等の金額については分譲当時から金額が明示されており、区分所有者はこれに納得して同意した上で区分所有権を取得している。」と指摘。「『区分所有者間の利害の衡平』は図られている」と反論した。

参考条文

規約時効)区分所有法30条

建物またはその敷地もしくは付属施設の管理または使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。

2(略)

3 前二項に規定する規約は、専有部分もしくは共用部分または建物の敷地もしくは付属施設(建物の敷地または付属施設に関する権利を含む)につき、これらの形状、面積、位置関係、使用目的および利用状況ならびに区分所有者が支払った対価その他の事情を総合的に考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図られるように定めなければならない。

4・5(略)

(共用部分の負担および利益収取)同法19条

各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持ち分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する。

 (共用部分の持分の割合)同法14条

 各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による。

2~4(略)

 (公序良俗)民法90条

 公の秩序または善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。

区分所有法30条3項に違反

19年4月のさいたま地裁川越支部判決は区分所有者の主張を認め床面積に応じて算出した額を超えて徴収した約182万円の支払いを管理組合に命じた。同面積に応じて算出した額を超える支払い債務が原告区分所有者にないことも認めた。

斎藤憲次裁判長は、専有部分1平方メートル当たりの金額に着目。2.7倍以上の格差に言及した上で、管理費等の月額総合計を総専有面積で除し、専有面積1平方メートル当たりの額を約372円だと認定。

全体の約57%が372円以上を負担している実情から「持分割合に比較して明らかに不均衡がある」と指摘した。

床面積割合超える部分 支払い債務の不存在も確認

その上で各住戸がリゾートマンションとして利用され「居住以外の使用目的や、これと異なる利用状況があったことはうかがわれない」などと判断。上表に規定された金額のうち専有面積1平方メートル当たり約372円を超える部分は「区分所有法30条3項、民法90条に違反し無効」だと結論づけた。

14・16年に改定された管理費等は、改定額に基づき1平方メートル当たりの金額を算出。同金額を超える部分をそれぞれ無効とした。

斎藤裁判長は、管理費等の負担は「専有部分の床面積割合によることを原則とするもの」だと言及。区分所有法19条に基づく「別段の定め」が同法30条3項に違反する場合「その衡平を害する限度で、これが無効となると解する」のが相当だとした。

「別表」が全て無効になるわけではないという解釈で、このため増額そのものは有効だとした。

「分譲時管理費等の金額に同意している」との管理組合側の主張には管理費等が「共有持ち分に応じて算出されたものでないことを説明したことを認めるに足りる証拠はない。

規約は、総会決議を経て変更されたが「金額を別表で定めることの理由について説明がなかった」「規約変更後も支払い額が同じだった」といった点を重視。「原告らが不均衡について認識していたということはできず、これらの事情で原告に不利に考慮することはできない」と述べた。

20年1月の東京高裁判決も1審判決を支持。提訴から控訴審の口頭弁論終結までに各区分所有者が収めた管理費等についても不当利得を認定し新たに約61万円の支払いを管理組合に命じた。

控訴審判決では分譲時、売買契約書で管理費等は「共有持分に応じて負担する」とされていたが、管理規約では分譲業者が当初就任していた「管理者」が別途定める管理費等を管理者に支払う、と規定されていた事実が新たに認定された。

八木一洋裁判長は、住戸取得時に管理費等が共有持分に応じて算出されていない点について「説明されたことを認めるに足りない」と指摘。

「区分所有者が管理費負担の不均衡や格差を認識していたとは認められない」とし「購入者は正確な持分割合と費用負担割合が異なっていることも熟知して購入している」とする管理組合の補充主張を退けた。

仮に区分所有者が管理費等の金額について同意していたとしても「そのことをもって『区分所有者間の利害の衡平』が図られているということはできない」とした。

以上、マンション管理新聞第1189号より。


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