免震・制振用オイルダンパーデーター改ざん事件 不適合品設置のマンション 今年2月に工事完了 『密』な情報共有、適切な情報開示で 困難乗り切る

投稿日:2020年10月30日 作成者:福井英樹 (2195 ヒット)

おととし発覚した、KYB(本社東京)・カヤバシステムマシナリー(本社三重)による免震・制振用オイルダンパーのデータ改ざん問題で、不適合品が設置されていた東京近郊に建つタワー型マンションの免震用オイルダンパー交換工事が今年2月、完了した。問題発覚から今月で丸2年。降って沸いた困難を乗り切った、新旧管理組合役員に話を聞いた。

コロナ禍で工事の完了報告は7月にずれ込んだが、無事に終了。

住民説明会の会場使用費等も含めて、交換工事に関わる費用は業者が負担した。当時分譲主らと交渉を行った元管理組合理事長は「無償対応してもらった、という部分では満足、というところはある」と話す。

同マンションに設置されていた免震用オイルダンパーは20本。不適合品が設置された住宅は公表されていない。

このため「交換用ダンパーの搬入時、ダンパーが入っていると分からないよう梱包に気を使ってもらった。周囲に不適合品が使用されていたことを知られたくなかったので」(前理事長)と、工事に際しては気苦労が絶えなかったようだ。

オイルダンパーのデーター改ざん問題に対する理事会の対応は早かった。

国土交通省の発表から2日後の2018年10月18日には、管理会社を通じて照会を行い同日中にマンションに設置される免震オイルダンパーが不適合品だと突き止め、4日後の22日には区分所有者に、その旨を報告するなど情報を公開した。

その一方で、この日まで何の説明も行わなかったマンションの売主に「遺憾の意」を表明。24日、説明会の開催や損害の賠償などを求める要請書を提出するなどの手を打ち、11月4日には売り主・建設会社・管理会社らによる会議開催にこぎ着けた。

このとき、元理事長は売り主に「責任をもって説明するというよりは、建設会社やカヤバらに責任を押し付けようとしている印象を持った」という。

そこで「交渉窓口はあくまで売り主」と位置付け。経過報告などは全て売り主から行ってもらうようにした。

交渉先が複数に及ぶと責任の所在があいまいになり交渉が長期化するケースがある。こういったリスクを回避するため交渉先を絞った、というわけだ。

交渉に関しては元理事長が精力的に活動。経過等は20人いる理事と常に情報を共有する一方、設備担当理事らとは電子メールなどで連絡を密にし臨時の会合も積極的に行った。

理事会で共有した情報は迅速に開示し、住民に情報が行き渡るようにした。こうした姿勢が功を奏したのか、交渉に関し住民から理事会に対する批判は一切なかったそうだ。

不適合品の交換は完了したが、長期修繕計画にはダンパーの項目がないなど、メンテナンスに対する課題もある。製品の保証についても不明確な点があるという。今後は、こうした点についても明確化を図る考えだ。

KYBによると、今年6月末時点で不適合が確認されたダンパー991件のうち交換が完了したのは594件。来年3月末までに対応を終えたい、としている。

以上、マンション管理新聞第1152号より。

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