ADR事業者認証まで9年“犯人は『コミュニティー条項』 削除巡る混乱で棚上げ 日管連

投稿日:2018年10月10日 作成者:福井英樹 (1599 ヒット)

 認証が遅れた原因は「コミュニティー条項」-。一般社団法人日本マンション管理士会連合会(日管連、親泊哲会長)が8月24日付けで、裁判外紛争解決手続き利用促進法(ADR法)に基づく民間ADR事業者の認証を受けた。2009年の検討開始から実に9年を経ての認証だった。しかし、なぜ、ここまで認証に時間がかかったのか。当時を知る元役人らに話を聞くと、意外な事実が浮かび上がった。
 日管連が設立された07年から昨年まで事務局長を務めた村上民夫さん。日管連が全国組織だった点など、認証が遅れた原因をいくつか挙げたが「最大の理由は『コミュニティー条項問題』だった」と明かす。
 「コミュニティー条項問題」とは、「管理組合の業務」としてマンション標準管理規約に規定されていた「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成」の削除を巡る、一連の混乱を指す。
 同条項の削除は、12年1月にスタートした「マンションの新たな管理ルールに関する検討会「(座長=福井秀夫政策研究大学院大学教授)の第9回会合(12年8月29日開催)で、「残る論点と新たな論点」の一つとして、正式に提示された。
 11年7月の同規約改正時、パブリックコメントに「マンションと自治会との関係が不明瞭」とする意見が寄せられていた経緯はあったが、突然ともいえる論点提示に検討会は混乱。以後2年半、検討会は「開店休業状態」になる。
 「この論点提示があった時期、実はADR法を所管する法務省がわれわれが実施する業務の内容について、国土交通省に意見書の提出を要請していたんですよ」(村上さん)
 事業者認証を目指す日管連が扱う分野は「マンションの管理に関する紛争」。紛争の種類は、マンション標準管理規約に規定される「管理組合の業務」をベースにしていた。
 法務省が意見を求めたのは、日管連が扱う紛争分野の種類・範囲。すなわち「管理組合の業務」について確認をしたかったからだ。
 当初は国交省も速やかな意見書の提出に応じていたが、検討会の論点提示で管理組合の業務に規定されていた「コミュニティー条項」が削除される可能性が出てきた。
 同条項がなくなれば、管理組合の業務に変更が生じ、扱う紛争分野の種類に影響が出る。この点が関係したのか「検討会の活動休止と同時に国交省の動きが止まり、事態が進まなくなった」。
 村上さんによれば、日管連は国交省側の勧めでADR事業者の認証を検討するようになり、この時期までは内容や調停方法などについての国交省への報告・調整、あるいは日管連内部の議論も含め、物事は順調に進んでいた。
 結局、事態が動いたのはコミュニティー条項が削除され、おととし3月に標準管理規約が改正された後。法務省への説明もスムーズに進んだが、弁護士や一部の司法書士らと違い、法律行為が行えない「マンション管理士」が実施者だったせいか、「研修規定について細かい部分で説明を求められた」など、なお曲折があった。

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 認可取得に伴い設置された「マンション紛争解決センター」には、95人がADR実施者として登録。当事者が同じテーブルについて話し合う「対話促進同席型」ADRで、トラブルの解決を目指す。
以上、マンション管理新聞第1084号より抜粋。
 
  裁判外紛争解決制度(ADR)とは
 ADRとは、民事上の紛争を、当事者として利害関係のない公正中立な第三者が、当事者双方の言い分をじっくり聞きながら、専門家としての知見を生かして、柔軟な和解解決を図るものです。(かいけつサポートHPより)
 英語では、「Alternative Dispute Resolution」(「裁判に代替する紛争解決手段」)といいます。
 ADRは民間機関が行うものであり裁判とは違いますが、民間機関がADR認証を受けると以下の特例的措置が認められます。
<ADRの法的効果>
①ADR認証を受けることによって、紛争解決手続きを報酬を得る目的で業として行うことができる(弁護士法第72条の例外的措置)。
②一定の場合に時効中断が付与される(法第25条)。
③他に訴訟が継続している場合に、一定の要件のもとに訴訟手続きの中止が認められる(法第26条)。

 ADRの種類
 ADRには、「仲裁」「調停」「あっせん」の3種があります。
「仲裁」は、当事者の合意(仲裁合意)に基づいて、仲裁人で構成される仲裁廷が実案の内容を調べた上で判断(仲裁判断)を示し、当事者がこれに従うべきこととなる手段です。
「調停」、「あっせん」とは、当事者の間を調停人、あっせん人が中立的な第三者として仲介し、トラブルの解決についての合意ができるように、話し合いや交渉を促進したり、利害を調整したりする手続きです。
「仲裁」は仲裁法に基づき実施されますので、日管連で行うADRは、「調停」「あっせん」といわれるADRです。

 日管連で行うADRとは
 「調停」「あっせん」のADRでもさらに、第三者の関与の違いから「対話促進・調停型」と「指導・裁断型」のADRにわけられます。
 「対話促進・調停型」は、第三者が当事者の話し合いの間で問題点を整理し対話を促進・調整し当事者が自律的自己解決を図ることをサポートし、「指導・裁断型」は、第三者が当事者の話を聞き解決案を提示するものです。
 私たちマンション管理士が関与するマンション紛争では、紛争解決後も当事者は同じマンションでともに暮らしていくという特徴があります。そのような紛争に対し、「指導・裁断」してしまうと、結果に納得できない当事者にしこりを残してしまい本当の解決にはなりません。しこりが残ると「ともに住む」ことは難しいからです。
 そこで、日管連では「対話促進・調停型」のADRをおこなうことを予定しています。

 「対話促進・調停型」ADRの特徴
① 第三者が「説得」するのではなく、当事者自身が自分たちで納得できる解決策を考える。
② 第三者は当事者の話し合いの場の創設に関与し、当事者の話し合いを促進・支援する。
③ 法律的な解決にこだわらず、当事者の感情・気持ちも考慮しながら、臨機応変解決策を模索する。
という特徴を持ちます。

以上、日管連主催「ADR実施者養成研修テキスト」より抜粋。

 福井英樹マンション管理士は、日管連が定める2日間の「ADR実施者養成研修」の修了後、別途定める当該「ADR実施者適性試験」に合格し、日管連ADR実施者95名の一人として、「日管連ADR実施者名簿」に登録されております。そもそも、当該「ADR実施者研修」で提供されるコミュニケーションスキルのトレーニングプログラムは、マンションコンサルタント業務を行う上でマンション管理士にもとより必要とされるスキルといえます。
 従来から、小職が関わる諸々の相談会等でも、管理運営上の諸問題に対応していますが、非常に多いのが、区分所有者同志が理事長等派と反理事長等派に分かれ、いがみ合い、分裂している管理組合等からの相談です。
 上記にもあるように、マンション問題においては、紛争解決後も当事者は同じマンション内でともに暮らしていくという特徴があります。民事訴訟手続きのように、当事者間の紛争を裁判所で法律的に強制的に解決するという手続きはマンション問題を解決するには不適切なケースも多々あります。
 今後、マンション管理士による当該日管連の「対話促進・調停型」ADRの需要がますます高まってくるものと確信しております。
 日管連登録のADR実施者として、当該技術と理解力を磨くべく、自己研賛に鋭意努めてまいる所存です。


福井英樹マンション管理士総合事務所

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