「オープンブック(価格開示)(元請けの原価を開示する)方式が建設業界の悪しき常識を変える 」東洋経済新報社刊より

投稿日:2014年12月22日 作成者:福井英樹 (3816 ヒット)

公共工事のように、元請会社が順番に受注できるように談合するという性格のものではなく、仕掛け人や紹介者に対する手数料や紹介料という名目で、談合を主導した者にお金が流れるという特徴があります。

これは、従来の公共工事の談合よりも悪質で、元請会社から見れば、本来の請負金額で大規模修繕を行うのではなく、手数料や紹介料の金額を割り引いた工事しか行われないということになります。

大切な管理組合の区分所有者が積み立ててきた修繕積立金を、誰かが不正に受け取っていると言わざるを得ないという話になります。絶対にあってはならないことです。

設計管理方式等で、管理組合が施工会社を募集するには、「募集要項」が必要になります。内容は一定の要件を満たした施工会社を選定するためのものです。

一定の要件は当然必要です。工事途中で倒産や、防水工事があれば、10年間のアフターサービス期間の間に倒産されては困りますし、監理技術者や主任技術者の技術力不足で低品質な工事をされても困ります。

しかし、この一定の要件は、同じような業者仲間をつくりだすことになります。これを仮に「畑」と表現しましょう。もし、この畑に合わせた募集要項をつくったらどうでしょうか。

必然的に小さな談合組織に発展するかもしれません。違う畑の業者が来ると談合は成立しませんので、当該一つの畑を守るためには、その畑にさらに有利な募集要項を作成する方向に力学が働きます。

当該畑の施工業者は当然その畑の中で勝負をしていますから、施工実績はすでにたくさん持っています。そして、あるレベル以上の施工実績、例えば、「年間10棟以上の大規模修繕の施工実績が必要」という条件を定めます。

それに該当するのが三社しかない状況で、募集要項に「10物件以上」と書けば、その三社しか参加できません。超大手ゼネコンでも参加できないほどです。
さらに、その施工実績に見合うだけの他の施工会社が登場すれば、資本金等をかさ上げするというように、募集要項の内容が不必要にエスカレートすることになります。

工事施工会社の選定事項をつくった時に、資本金や実績が、それに合致するのが仮に4社だとすると、その段階でどの4社かはわかるわけで、その4社はギルドを形成したことになって、その4社以外には仕事がいかないということになります。

これは、たまたま管理組合がそういう風に決めたからギルドが形成されたというのではなく、先駆者たちが自分たちを守るために、先駆者利益を享受する為につくった募集要項なのです。

工事施工会社から「自分たちが対象となるような募集選定要項を!」ということを言えばそうなるわけです。まさしくギルドの形成と言えます。

極端な場合ですと、「創業10年以上」とか、専門工事会社なら「資本金が一億円以上」というのもあります。そうなると、関西なら、4~5社ぐらいしか出てこれなくなります。かつ、地元での実績云々となったら、ほんとうに絞られてきます。超大手ゼネコンでさえ参入できません。

さらに、「経営事項審査結果通知書」などの点数について、すごく上の方で線を引いてしまうのです。ROIとかROAとか自己資本比率とかそういった話です。

そうやって優秀な専門工事会社を排除してしまっているのです。実際には、新規参入者であっても、本当にきちんとした技量があって、それをマネジメントする人がしっかりしていれば、その会社に直に発注できるはずなのです。

これが今の大規模修繕工事での一番の問題です。詰まるところ、ギルドの形成です。

「これ以上の資本金の会社でないと倒産リスクがあります」
「この工事は難しい工事だから、工事実績がないとむりです」
等と言われれば、素人の理事会もしくは区分所有者たちは、そうかなと思ってしまいます。

その結果。
「こんな透明性の高いことはないでしょう」
というような話をしていくわけです。これが似非透明性です。

以下、「建築のプロが悩む、CM法律問題Q&A」日本コンストラクションマネジメント協会発行 釜田佳孝弁護士著より。

談合による不適切な選定支援により発注者(管理組合)に何らかの損害を与えるであろうことは予想できますので、損害発生に対する故意・過失があることは明白です。この場合、選定された設計者等や談合に加わった者も共同不法行為者として不法行為責任(民法第709条)を負うことになると思われます。

また、設計者等と発注者間には準委任契約関係が成立していますので、設計者等は発注者のために業務を誠実に処理すべき法律上の義務を負担し、発注者との間には法律上の信任関係が存在することから、刑法第247条の背任罪における「他人のためにその事務を処理する者」に該当します。

また、設計者等はその業務として適切な選定支援を行う義務があるにもかかわらず、特定の者に受注させ、自らは紹介料を受け取り、発注者(管理組合)には損害を与えることになりますので、「自己もしくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えた時」に該当し、背任罪が成立することになります。

この場合、関与した関係者全てが共犯者や幇助者として刑事責任を負うことがあります。

また、実際には不適切な選定支援を行うつもりであるにもかかわらず、発注者(管理組合)との関係では適切な選定作業を行うように装って、特定の設計者等と契約をさせた場合は、刑法第246条の詐欺によりつりあげられた報酬、請負代金等の経済的損害を与えた者として、関係者すべてに詐欺罪が成立することも考えられます。

福井マンション管理士の独り言:

建通新聞やマンション管理新聞で大規模修繕等の募集告知を、上記を踏まえて、よく眺めてみると、
まさしく、「似非透明性」がまかり通っています。「公募のようで公募でない」まさしく似非透明性の世界。

あまりにも異常なキックバックフィーが横行しています。大規模修繕工事に関係するもの全てが倫理観をもっておれば、このようなことは起こらないのですが、現実は平然と談合、キックバックなどが行われています。

ほとんどの管理組合、理事会はその存在を知りません。実態を見据え、透明性、説明責任を達成させるために、我々マンション管理士は第三社の立場でガラス張りの世界である、コストとフィーを開示する「オープンブック(価格開示)方式」を駆使し、正しい大規模修繕工事が行える環境づくりを押しすすめていくことが使命と心得ております。


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