規約に定めのない文書の閲覧・撮影は不可 「団体自治」重視 判例ファイル
区分所有者は、区分所有法や管理規約に規定されていない文書の閲覧・写真撮影を求める権利を有しないー。
管理組合文書の閲覧・写真撮影を巡る訴訟で昨年10月、名古屋地裁がこんな判断が示している。大竹敬人裁判官は、区分所有者が閲覧・写真撮影を求めた文書のうち、区分所有法・管理規約で閲覧に関する規定がある総会議事録、元帳・総仕訳帳・毎月の収支報告書の閲覧のみ認める判決を言い渡した。写真撮影は「撮影をさせるよう求める権利を有しない」として認めていない。規約に規定がない領収書・請求書・工事発注書・契約書等の閲覧・写真撮影請求はいずれも、請求する権利がない、と判断している。
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判決は昨年10月24日付。区分所有者側は控訴したが訴えは棄却され、最高裁に上告している。
区分所有者側は、民法645条(受任者による報告)を類推適用し規約に閲覧規定がない文書の閲覧・写真撮影を認めた2016年の大阪高裁判決を引き合いに出し閲覧等を求めたが、大竹裁判官は、区分所有法が管理組合文書の一部についてにしか閲覧規定を設けていない点に着目し、規約に規定されていない文書の閲覧や写真撮影は「当該団体の規約の定め」、また総会決議など「(いわゆる団体自治)に委ねられている」と認定。
管理組合では区分所有法・規約の定めの限度で文書の閲覧が認められるにとどまり「その他の文書の閲覧や管理組合において保管される文書の謄写・写真撮影は、少なくても権利としてこれらを認めることはできない」と結論づけた。
民法645条については、仮に区分所有者に対し報告義務があったとしても、具体的にどの範囲の文書を閲覧・謄写・写真撮影をさせれば報告義務を果たせるかは「一義的に決せられるものではない」と言及。文書の閲覧は、報告義務の内容をどう具現化するかに関する個々の団体の判断(団体自治)で決せられるべきものだと述べた。
<判例時報2624号)
マンション管理新聞第1311号より