新型コロナ感染拡大で 総会開催「Q&A」 5月の総会シーズン控え 「緊急事態」と位置づけ 理事会決議で「延期」決定も マンション管理センター

投稿日:2020年04月11日 作成者:福井英樹 (5514 ヒット)

総会延期措置、管理規約に規定がない場合は理事会決議で延期決定もー。公益財団法人マンション管理センターは3月27日、新型コロナウイルス感染拡大に伴い総会開催に関する問い合わせが多く寄せられているとし、総会開催時の留意事項や延期する場合の手順を説明した「Q&A」をホームページで公表した。5月の総会シーズンを見据えた対応で、延期については「災害発生の場合等にはやむを得ず期間内に総会を開催できないこともあり得る」と指摘。新型コロナウイルスの感染拡大も、こうした「緊急事態」に準じ総会の開催リスクや組合員の安全等も勘案し、「期間内の開催が可能か否かが検討されるべき」との解釈を示した。

Q&Aでは①通常総会を開催する場合の留意事項②総会を開催しない場合の書面・電磁的決議③総会開催の延期について④理事会決議による延期決定⑤延期する場合の手続き⑥延期による区分所有法上の解釈⑦延期した場合の管理委託契約更新手続きーの7項目について解説している。

通常総会を開催する場合は、議決権行使書か委任状による議決権行使方法を推奨する方法が考えられる、としている。直接会場に足を運ばなくても総会を成立・議案を可決できるようにするわけだ。この場合、来場を抑えるため事前に書面による議決権行使を推奨しておく必要がある。

決議事項など手続きも例示 開催なら「書面行使」推奨も手

Q&Aでは議案に対する意見を文書で表明できる旨知らせておく、などの留意事項も示している(表①参照)。

②は総会を開かず書面・電磁的決議を行う際の法規定を述べた。

総会の延期については「新会計年度開始以後2カ月以内に招集しなければならない」と規定されるケースが多い管理規約に言及した上で災害発生時など「やむを得ず期間内に総会を開催できないこともあり得る」と想定。新型コロナウイルスの感染拡大についても、災害児童用、総会の開催リスクや組合員の安全等も勘案し期間内の開催が可能かどうか検討されるべきものだとした。

理事会決議による総会延期決定には「期間を超えて総会を延期せざるを得ないと判断する場合」には理事会決議で総会延期を決定することも考えられるとした。マンション標準管理規約には総会延期についての規定が設けられていないが「緊急時の対応」として、解釈を示した形だ。

このため、管理規約に規定がないケースを想定した、総会を延期する場合の手続きも例示(表②参照)。

理事会の決議事項として、延期決定のほか①新役員が就任するまで現役員が職務を行う②総会で次期収支予算が決まるまでは今期収支予算に従い予算執行する③管理委託契約は従前と同一条件での暫定契約を結ぶーの3項目を示している。

総会延期 直ちに法律違反には当たらず

総会の延期措置が区分所有法違反になるかどうかについては、法務省民事局がホームページ上で公表した見解を引用した。

同見解では、新型コロナウイルス感染症の影響で前年の開催から1年以内に区分所有法上の「集会」が開催できなくなった場合の法解釈を示している。

区分所有法では管理者、管理組合法人の場合は理事が年に1回は集会を招集しなければならないと規定されている。事務の報告は「毎年一定の時期」に報告しなければならない、との規定もあるが見解では「前年の開催から1年以内に必ず集会の招集をし、集会において事務の報告をすることが求められているわけではない」。

このため、前回の集会から1年以内に区分所有法上の集会が開催できない事態に陥った場合は「その状況が解消された後、本年中」、つまり今年中に集会を招集し、必要な報告をすれば足りる、と判断している。

管理規約上の「総会」を招集する管理組合理事長は一般的に区分所有法上の管理者に就任する決まりになっているため、区分所有法上の「集会」は管理規約上の「総会」に当たる。総会延期は管理規約違反になってしまうが、今年中に「集会」を開けば区分所有法違反にはならない、ということだ。

管理委託契約の更新については一般社団法人マンション管理業協会が2月27日公表した「マンション管理会社の感染症等流行時対応ガイドライン」で示した契約更新方法例を参考にした。

「緊急時の対応として理事会で従前と同一条件での暫定契約を締結することについて決議する方法が考えられる」とした上で、理事会決議により契約を結ぶことについて管理会社と事前協議を行い、理解を得ることが大切だとしている。

 

表①総会開催時の留意事項

Q 新型コロナウイルスに関する注意喚起が続いている中で、通常総会を開催する場合の留意事項は何ですか

A 組合員に対し、総会会場に来場することなく、議決権行使書または委任状(理事長等を指定する)により、議決権を行使してもらうことを、通知または個別連絡により勧める方法が考えられます(同時に掲示板等に掲示する方法も考えられます)

・議決権行使書および委任状を送付していない場合は、議決権行使書等を急いで送付し総会開催までに提出してもらうようお願いする

・組合員には、体調を考えた上で、総会への出欠を慎重に判断してもらい、欠席する場合には、議決権行使書により、議題に対する賛否を表明してもらうことをお願いする

・議決権行使書により議決権を行使してもらう場合には、議案に対する意見を文書で表明してもらうことも可能であることを併せて知らせる

・出席者がある場合には、マスク着用、室内換気、短時間の運営等に努める

・なお、「招集してしまったから開催しなければならない」ということではなく、状況を踏まえ、中止することも含め柔軟に判断することも必要と考えられます

表②総会を延期する場合の手続き例

Q 通常総会を延期する場合にはどのような手続きが必要ですか

A 一例として、次のような手順が考えられます(管理規約に規定がない場合)

1 理事会を開催し、緊急時のやむを得ない対応として、通常総会を延期することを併せ、その間の管理組合の運営は次のように行うことを決議する

ア 総会で後任役員が就任するまでは現役員が職務を行うこと(標準管理規約第36条第3項)

イ 総会で時期収支予算が決定するまでは今期予算に従い予算執行すること(標準管理規約第58条第3項)

ウ  管理会社との委託契約については、従前契約と同一条件での暫定契約を締結すること(一般社団法人マンション管理業協会発行の「マンション管理会社の感染症等流行時対応ガイドライン」を参照)

2 組合員に対し、理事会で決議した事項(通常総会を延期すること、ア、イ、ウ)を通知する

・通知と同時に通知内容を掲示板等に掲示する方法も考えられます

3 理事長は、通常総会の開催を延期すること等に関する組合員から問い合わせ、異議については真摯に対応する

・組合員に対しては、現在の状況は今までにはない経験のない事態であり、また、災害発生時において、物理的にやむを得ず総会を開催できない事態に準じることと考えられ、管理規約の規定に沿わないこともあるが、組合員の安全・安心のため、やむを得ず延期するものであることを理解してもらう

4 その後、総会を開催できる状況になった場合には、可及的速やかに総会を開催し、前期役員が継続して職務を行ったこと、前期収支予算に従い通常の業務を執行したこと、管理会社との委託契約については、従前契約と同一条件での暫定契約を締結したことを報告するとともに、改めて、新役員選任、収支予算、委託契約更新について決議することが必要です

※「新型コロナウイルス感染拡大における通常総会開催に関するQ&A」から抜粋

以上、マンション管理新聞第1134号より。

小職が知己の某自主管理マンションから相談を受けました。

ご多分に漏れず、今回総会を開催しないで、書面やメール等での「書面決議にしても良いのでしょうか?」と。

書面決議とは、区分所有法第45条で定められている、総会を開かないで、総会で決議したものと同様の効果があるという決議方法ですが、

これには重大な要件が必要となります。

1.書面又は電磁的方法で決議すること(総会を開かないこと)について、全区分所有者の承諾を得ていること。

2.決議する内容について、全区分所有者が賛成している。

のどちらかが必要となります。実務上は、「書面決議」はハードルが高く、限られた場合にしか使われません。小規模なマンションで、所有者全員がマンションに居住していて、理事長もしくは管理者が全戸を説明して回れば総会を開催しなくても全員の同意が得られるようなケースです。相談を受けたマンションは20戸以内の小規模マンションなので、それが可能となります。

ただし、この場合でも、理事長に区分所有法34条2項が義務づけている年一回の総会招集義務や同法43条が定めている事務の報告は免れることはできませんので、上記のように総会開催を延期することが現実的ではないかと思われます。

結論としては、この度の新型コロナ等の緊急時であるとのことで、理事会の判断だけで、全員の同意もなく「今回は総会を開催しないで書面決議にします」と宣言して、議案書と議決権行使書を配布し、議決権行使書を期日までに提出してもらい、賛成数が決議要件を満たしていれば、反対の人、未提出の人がいても、決議できたとするというのは区分所有法45条の「書面決議」ではないのでくれぐれも注意が必要ということです。


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