判例ファイル 意思能力欠く区分所有者への「弁明」の機会、通知だけでは不十分 「59条競売」訴訟で裁判所が判断

投稿日:2020年02月05日 作成者:福井英樹 (2193 ヒット)

意思能力を欠く区分所有者になされた「弁明」の機会、通知を届けるだけでは不十分ー。管理費等の滞納に起因する区分所有法59条に基づく競売請求訴訟で、札幌地裁が昨年1月22日、こんな判断を下した。裁判の被告は口頭弁論終結時点で90歳。極めて要介護度が高く、会話もできず、事理を判断する能力を欠いた状態で、管理組合が弁明の機会を付与する通知を送付したが無反応だった。

判決では、区分所有法の趣旨から「形式的に区分所有者の住所地に弁明に機会を付与する旨の通知が届けられるだけでは足りず、区分所有者がその内容を了解することができる能力を有していることが必要」だとし、訴えの提起は」被告に対する弁明の機会を付与しないままされた瑕疵ある決議に基づくもの」だと結論づけた。

ただ一方で管理組合側は、訴えに際し裁判所に区分所有者の特別代理人を選任するよう申し立てを行い、この特別代理人に改めて弁明の機会を付与していた。

判決では、この特別代理人に対する弁明の機会の付与と、その後に行った再度の総会決議で「瑕疵は治癒された」と判断。最終的には競売を認める判決を言い渡した。判決は確定している。

特別代理人に選任された弁護士は「民事訴訟法上の特別代理人は、その訴訟限りの臨時の法定代理人たる性質を有するもの」で、その権限は「訴訟行為」に関する訴訟関係者の意思表示に限定される、と主張。特別代理人になされた「弁明の機会」について「当事者本人に事情を十分探知し得ない特別代理人の代理にはなじまない」と反論していた。

判決では、「代理に親しまない」とされた特別代理人の選任が否定された最高裁判決がる離婚訴訟と異なり、「弁明の機会」は区分所有法に基づく手続き法上の要件で、競売請求自体があくまで財産法上の請求である点から、「弁明の機会の付与をうけることは、民事訴訟法上の特別代理人の権限の範囲内に属する事項だとし、代理人の主張を退けている。

<判例時報2424号>

マンション管理新聞第1127号より。


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