宅地建物取引士の5年ごとの更新講習を受けてきました。 福井英樹マンション管理士・宅地建物取引士

投稿日:2019年10月14日 作成者:福井英樹 (1278 ヒット)

去る2019年10月9日(水)公益財団法人不動産流通推進センターが主催する5年ごとに実施される「宅地建物取引士」の更新講習を受講してきました。

当該講習を受けなければ、福井英樹は宅地建物取引士ですが、「宅地建物取引士証」は剥奪され、「宅地建物取引士」とは名乗れなくなり、単なる宅地建物取引士資格者になってしまうというものです。講師の講演内容はともかく、講習テキストは分厚く内容の濃いもので、マンション管理士としてもしっかりと復習すると役立つものが多いと思われます。

その中で、2020年4月に施行される改正民法が取り上げられていましたので、下記にご紹介させていただきます。

分譲業者に対して、マンション等の共用部分の瑕疵に関する責任を追及する場合に

①契約締結日が2020年3月31日以前であれば、瑕疵担保責任に基づく請求(旧民法570条、566条)、契約締結日が2020年4月1日以降であれば、契約不適合責任に基づく請求(改正民法562条、564条)

②アフターサービス契約に基づく請求

③不法行為責任に基づく請求(民法709条)

が考えられます。

2020年4月1日施行される改正民法によって、従来の瑕疵担保責任に基づく請求(旧民法570条、566条)は契約不適合責任に基づく請求(改正民法562条~566条)に変更されます。

なお、契約不適合責任に基づく請求が適用されるのは、施行日たる2020年4月1日以降に締結された契約についてであり、それ以前に締結された契約については今後も瑕疵担保責任に基づく請求が適用されます。

すなわち、当分の間は、契約締結日に応じて、「瑕疵担保責任に基づく請求」と「契約不適合責任に基づく請求」とを使い分けることになります。

マンション等の外壁や屋上等の共用部分に欠陥があり、契約の内容に適合しない場合には、管理組合は分譲業者に対して、「契約不適合責任」を追求することができます(改正民法562条、564条)。

契約不適合責任では、「隠れた」という要件はなく、購入者が契約不適合を知っていた場合や、一見して明白な契約不適合の場合でも、契約不適合責任を追及することができるようになりました。

契約不適合責任の場合は、契約不適合を知ってたにもかかわらず、1年間売主に対してその旨を通知しない場合は、請求することができなくなります(改正民法566条)。

なお、売主が引き渡しの時にその不適合を知り、または重大な過失によって知らなかったときでも、売主保護の必要性はないので、1年間の期間制限はありません(改正民法566条ただし書)。

また、以前は、「売主に対して、具体の瑕疵の内容とそれに基づく損害賠償請求する旨を表明し、請求する損害額の算定の根拠を示す」必要がありましたが、、改正民法566条においては契約不適合についての「通知」をすれば足りることとなりました。

さらにまた、契約不適合責任に基づく請求も債権である以上、改正民法566条の期間制限とは別に、債権に関する消滅時効にかかることになります。つまり、「権利を行使することができることを知ったとき」から5年間行使しないとき、または「権利を行使することができる時から10年間行使しないときは、時効によって債権が消滅することになります(改正民法166条1項)。

管理組合が分譲業者に対して、契約不適合に基づく請求として請求できる内容は、①損害賠償請求または②解除、さらに③追完請求があります。

①損害賠償請求(改正民法564条、415条)

瑕疵担保責任による損害賠償請求は無過失責任でしたが、契約不適合に基づく損害賠償請求は、債務不履行一般の損害賠償請求と同じく、債務者の帰責性が必要となります。また、瑕疵担保責任に基づく損害賠償の範囲は、原則、その契約が有効であると信じたために発生した損害)に限られていましたが、契約不適合責任に基づく損害賠償の範囲は、債務不履行一般の損害賠償請求と同じく、履行利益(契約が履行されていれば得られたであろう利益)にかかる損害まで認められることになります。

②契約解除(改正民法564条、541条、542条)

瑕疵担保責任に基づく契約の解除は、「契約をした目的を達することができないとき」(旧民法570条、566条)に限って認められていました。一方、契約不適合責任に基づく契約の解除は、契約の目的が達成できない場合でなくても、相当の期間を定めて履行の催告をし、期間内に履行がないときは、契約を解除することができます(改正民法541条)。

また、債務の全部の履行が不能であるときや債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したときなどは、催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができます(改正民法542条)。ただし、契約不適合が「契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるとき」には、解除は認められません(改正民法564条、541条但し書き)。

③追完請求(改正民法562条)

瑕疵担保責任においては、追完請求については明文規定はありませんでしたが、契約不適合責任においては、追完請求ができることが明文化されました(改正民法562条)。

追完請求の具体的な内容としては、修補請求の他に代替物もしくは不足分の引き渡し請求があります。

 

以上、「宅地建物取引士証」5年ごと更新講習用テキストより。


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