8割が「実数精算方式」採用 大規模修繕 「不確定要素」を調査 マンション管理センター 設計コンサル対象に        最終的な工事金額「契約時から高くなる」4割強

投稿日:2019年09月13日 作成者:福井英樹 (3645 ヒット)

 公益財団法人マンション管理センターは、追加工事や実数計算といった大規模修繕工事の不確定要素に係わる取り扱いを整備しようと設計・監理コンサル業者を対象に調査を実施し8月26日、結果を公表した。回答したコンサルの8割以上が工事に際し実数精算方式を採用し、4割が契約時と比べ最終的な工事金額が高くなる、と答えている。
 調査は東洋大学理工学部建築学科・秋山哲一研究室と共同で実施。昨年12月から今年2月にかけ、設計・監理コンサル205社に工事中の変動要素にどう対応しているのかアンケート調査を行った。有効改修は55。回収率は26.8%。「マンションの大規模修繕工事における工事中の変動要素の取り扱いに関する調査結果」としてまとめ、ホームページで公表している。
 コンサルには実数精算、設計変更と追加工事、変動要素に対する予備費、予備費と追加変更対応、竣工後の工事金額の変動状況を尋ねた。
  ▲実数計算
 大規模修繕工事では、躯体の補修箇所やタイルの張り替え枚数など、事前に正確な数量を割り出し、工事金額を確定するのが難しい項目がある。
 正確な数をつかむには足場を設置して綿密な調査をしなければならない。結果的に調査に多額の費用を要するため、コスト面の負担を回避するなどの理由で、設計時点では数量は簡易調査等で予測した「暫定」にとどめるのが一般的だ。
 この場合、最終的な補修箇所は着工後実際の劣化状況に応じて決め、終了時に精算する。「実数精算」と呼ばれる方式で、「暫定」時と比べ、補修箇所が多くなるケースが少なくない。
 グラフ①(略)は、工事請負契約で、こうした変動要素をどう扱っているかの回答。実数精算扱いにしているのが81.1%と多数を占めた。工事業者が事前に自ら数量を確定して値段を入れる「責任数量方式」を採用しているのは11.9%だった。
 「暫定」の設定方法は「簡易調査から建物全体の劣化数量を拾い出し、暫定数量を設定」が最も多く、「サンプリングエリアの1平方メートル当たりの劣化数量を算出」が2位。以下「1住戸~数住戸の劣化数量から1住戸当たりの劣化数量を設定」「過去の経験からの1平方メートル当たり単価から算定」の順で続く。
 暫定数量と精算数量の差が最も大きいのはタイル補修。ついで躯体、躯体鉄筋発さび部、躯体モルタルが挙げられている。
 精算は契約金額から「追加生産になることが多い」、つまり増額になるケースが43.8%。契約金額とほぼ同額の精算になることが多い」「減額精算になることが多い」は共に25.0%だった。
  ▲変動要素に対する予備費
 工事費の増額対応策としては「予備費を見込むようにアドバイスする」が87.3%。「ケースバイケース」(3.6%)「予備費を見込むようにアドバイスすることはほとんどない。あるいは少ない。」(3.6%)といった回答もあった。
 予備費は工事費の「10%程度」とする回答が最も多かった。(グラフ②略)
  ▲予備費の執行手続き
 「総会議案書に記載し総会で承認を取る」が50.9%。「理事会か修繕委員会で説明し了承を取る」が38.2%。
  ▲予備費と追加変更対応
 追加変更等費用が予備費を超過した場合「工事内容の変更等を行い、予備費内に収まるよう対応する」が54.5%。「追加変更工事内容についての予算を増額し工事を実施する」は29.1%だった。5.5%は「予備費を超過したことがない」と答えた。
  ▲工事竣工後の工事金額の変動状況
 実数精算、設計変更、取りやめなどを全て含む工事金額は「工事契約金額から追加精算になることが多い」が43.8%でトップ。「工事契約金額とほぼ同額の精算になることが多い」も37.5%あった。「減額」は12.5%だった。
 追加精算になる主な要因は、やはり「実数精算」。着工後、管理組合の要望でバリアフリー・省エネ・防犯対策工事を行い追加精算になった、という回答もあった。
 減額の場合「安全率を見込んでいる」とする回答があった。


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