規約改正で給排水管専有・共用部一体改修 専有部工事費も管理組合が負担 日本設備工業 更生、更新、リフォーム技術を駆使 つつじ野団地 663戸を1戸も残さず負担金なしで実現

投稿日:2019年08月31日 作成者:福井英樹 (3922 ヒット)

 度重なる専有部分の給・排水管からの漏水に頭を抱えている管理組合は少なくない。長期修繕計画で共用部配管の改修は予定されているが、専有部配管までは見込まれておらず、結局、専有部配管だけが老朽化したまま取り残されてしまっているためだ。そんな中、管理規約を改正し、専有部配管改修を共用部と一体化し給・排水管改修工事を実施した集合住宅がある。埼玉県狭山市のつつじ野団地だ。工事対象となった663戸のうち、1戸も欠けることなく見事に完成させた。
 つつじ野団地は1981、82年入居開始の106棟1004戸の大規模団地だ。8階建て高層2棟、5階建て中層13棟、3階建てメゾネット4棟、3階建てテラス11棟、2階建てテラス76棟からなる。今回の給・排水管専有部・共用部一体化改修工事は、テラス棟を除く19棟663戸が対象となった。
 663戸、1戸も欠けることなく専有部の配管対策を終えることができた最大の要因は、87年からの自主管理体制の維持・継続により築いた組合員の管理組合執行部への全幅の信頼だ。
 ところで同団地管理組合の長期修繕計画では、給・排水管対策は共用部だけが見込まれていた。長期修繕委員会で検討されてきたが、漏水事故の可能性の高さと改修工事をやらずに残される可能性の高い専有部分問題は常に課題だった。各種のセミナー等に出席すると、この取り残された専有部分からの漏水事故に振り回される管理組合の窮状も知った。
 「共用部からの漏水事故はほとんどない」「漏水事故で被害が甚大となるのは専有部が原因」「専有部の給・排水管工事を各家庭に任せると、やらずに残ってしまう住戸が発生し、将来漏水事故の可能性が高い」「マンション全体を均一な品質で工事したい」として、修繕委員会は「専有部最優先」の方針を打ち出す。
 同委員会は規約の整備の検討に入る。専有部を含む給・排水管の改修工事を共用部との「一体的改修」と見なし、管理組合の責任と負担で実施できるように改正することにした。すでにリフォームなどで配管工事を実施済みの世帯には、応分の工事費相当額を返い戻す旨も改正に盛り込んだ。
 「専有部最優先」の方針を打ち出したが、修繕積立金は専有部改修は見込んでいない。
 そこで、共用部の修繕積立金をやりくりし、専有部工事費に回し、各戸負担金なしで工事ができる方法の検討に入った。
 共用部給水管は劣化度などを見て随時補修として更新しないことに決定。止水栓も、新しく取り付けてあり、更新するのはもったいないことも加味された。
 排水管の改修は共用部・専有部を更新せずに、既存管を再利用しエポキシ樹脂で専有枝管と共用立て管を継目なしに1本の管とする更生工事を採用。工事費を減額させ、専有部に費用を回すことで各戸負担なしでの工事に道を開いた。
 住民が生活しながらの工事となるだけに。更生工事の特徴である短工期、低騒音、工事中の生活不便の少なさも採用決定の大きなポイントとなった。
 2017年12月の臨時総会で管理規約の改正、給・排水管専有部・共用部一体化工事の議案が承認された。昨年12月13日から今年4月30日まで約1年5カ月間かけて無事工事は終了した。施工業者として選ばれたのが日本設備工業(本社東京、高山真人社長)だ。
 「専有部工事となる床を剥がしたり、壁を剥がしたりなどの大工事仕事が伴う。その点、日本設備工業さんは設備工事会社でありながらリフォーム部隊を持っていらっしゃる。実績も多い。提示された価格も加味して、同社に決定した」「本当に良くやってくれた」と管理組合は高く評価する。設計・監理は改修設計(本社・東京)が担当した。
 配管改修はたて系統ごとに作業を進めるため、1戸でも入室できないと工事は完成しないだけに本人か代理人の立ち会いが必要。日本設備工業の徹底した事前調査のおかげで、管理組合ではなかなか連絡がつかなかった外部オーナーと連絡がついて着工できたケースも少なくない。中には入室拒否する人もいたが、長期修繕委員会との強力なタッグによる粘り強い説得で入室可能となり、無事工事ができたケースも。
 専有部の改修では各戸負担金のない露出配管と負担金ありの床下隠蔽工事を選択できるようにした。
 日本設備工業では空き部屋だったタイプの違う2部屋を借りて工事を行い、最終的な露出配管の姿が見学できる工夫も行った。配管ルートも極力見えなくしたことで「これなら安心だ」と住民の不安の解消に努めた。

 工事済みの住戸には応分の工事負担相当額を返戻

 ところで、工事済みの組合員への応分の工事相当額の返戻の件が、排水管の更生工事の際に、管理組合に提出された申請書と現場状況を照らし合わせて確認した。
 「配管を替えたと思っておられたが、実際はシステムキッチンだけ交換して配管更新をやっていなかった」という世帯も多かった。中にはリフォーム業者が実施したといっていながら実際は交換しておらず、業者のうそが露呈したケースも。結局返戻申請100件中、実際の返戻対象は80件となった。
 今回の工事で「今後、漏水事故の不安がなく、安心して暮らすことができる。若い夫婦が住み、子供たちの明るい元気な声が聞こえるような世代交代がスムーズになると思っている。大いにPRしたい。」と管理組合は将来を展望する。

 以上、マンション管理新聞第1113号より。記事につき、誤字等があっても、そのまま表記。

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