マンション解体 いばら道  全所有者を突き止め 合意へ説得 増える老朽物件「解体費 義務化を」 朝日新聞2019年5月10日刊

投稿日:2019年08月03日 作成者:福井英樹 (190 ヒット)

 新潟県湯沢町で、老朽化したリゾートマンションの一つが解体された後に更地として売却され、10日に管理組合が解散する。所有者全員が合意してのマンション解体は珍しい。マンションの老朽化が全国的な課題となるなか、5年がかりで敷地の売却にこぎつけた今回のケースは「マンション終活」の難しさを浮き彫りにした。

         廃墟化を懸念 更地にして売却

 解体されたのは、上越新幹線越後湯沢駅から車で約30分の苗場高原にある「マンション苗場」。1975年築の6階建てで、40~50平方メートルの30部屋があった。レストランもあり、苗場のリゾートマンションの草分け的な存在だった。
 しかし、全国有数のスキーリゾートである湯沢ではバブル期にマンションの新築ラッシュとなって物件が増え、バブルも崩壊したため、マンション苗場の利用客は激減。管理費や修繕積立金の滞納も相次ぎ、修繕もままならなくなった。
 廃墟になるのを避けようと2014年、所有者の一人である新潟県柏崎市の建設会社社長、石坂泰男さん(54)らが動いた。散り散りになっていた所有者(28の個人・法人)を登記簿で調べ、アンケートを郵送して意向を聞いた。15年には臨時総会を開いて管理組合を再起動させた。
 アンケートの回答があった21人で、マンションを使い続けたいという人は皆無だった。解体の方針が決まり、建物を閉鎖した。
 ただ、マンションを解体して更地として売却するには、原則として所有者全員の合意が必要だ。
アンケートした28通のうち4通は宛先不明で戻ってきた。所有者を探して合意を取り付けなければ、解体も売却もできない。作業に当たったのが、この物件を担当するマンション管理会社エンゼル(東京都千代田区)のマンション管理部長、大野元さん(61)だ。
 大野さんは、アンケートが戻ってきた3人と1法人の住所周辺の「聞き込み」から始め、所有者を突き止めた。2室を所有していた法人は何度か住所が変わって所在不明になっていた。元法人経営者の特徴的な名字と同じ名前の診療所を大野さんが見つけ、医師の父親が、探していた元法人経営者だと判明した。
 所有者の一人は解体に反対していたが、大野さんは「このまま幽霊屋敷になって事故が起きたら、あなたが責任を問われますよ」などと説得し、ようやく解体への合意が得られた。
 管理組合は17年の総会で全員合意による解体を決議。たまっていた修繕積立金3500万円を使って解体し、昨年6月に更地になった。最後まで解体に反対した人は土地売却に合意しなかったが、管理組合は管理費滞納を理由に、その人の土地の持ち分を裁判所の「競売」にかけた。それが今年2月に落札され、敷地も売れるようになった。
 敷地は近くのペンション経営者が500万円で買ってくれた。滞納されていた管理費や修繕積立金のうち約1千万円を回収できたこともあり、所有者の追加負担なしで処分できた。石坂さんらが動き出してから5年かかった。
 大野さんは警告する。「マンションは大規模修繕の積立金などはあるが、解体に備えた制度がない。整備を急がないと日本中が廃墟だらけになる」
 今回のケースで売却が実現した背景には、一部の所有者が納め続けていた修繕積立金が使われずにたまっていて、たまたま解体資金を確保できたことがある。
 それでも5年の歳月と、関係者の膨大な手間を要した。マンションの「終活」がいかに困難かということも示している。湯沢町にはバブル期を中心に58棟(計約1万5千戸のマンションが建ったが、解体して更地になったのは今回が初めてという。

          築40年超 20年後350万戸に

 老朽化問題はリゾートマンションに限った話ではない。国土交通省の統計では、分譲マンションの総戸数は17年末時点で約644万戸ある。築40年超の老朽物件は17年末で約73万戸あるが、20年後の37年末では5倍近い約350万戸に増えると見込まれている。
 マンションの老朽化が進むと、好立地の物件でなければ資産価値が下がり、空室が増えやすい。住んでいたオーナーが死亡して空室になるケースも出てくる。
 空室が増えると、管理費や修繕積立金の滞納が起きがちになる。滞納が増えると、日常のマンション管理が行き届かなくなったり、大規模修繕ができなくなったりして、さらに資産価値が下がる「負動産化」の悪循環に陥りやすい。
 見切りをつけてマンションを解体しようとして、そこには「所有者の合意」という高いハードルが待ち受ける。解体の合意形成の難しさは、都市部などの定住用マンションでも変わらない。修繕積立金が十分にプールされていなければ、修繕も解体もできないまま、廃墟となって放置されるリスクが高まる。
 民間シンクタンク、シンクダイン研究主幹の米山秀隆さんは「少子化が進む日本では今後、マンション建設は解体を前提にするべきだ。建て替えでも売却でも合意は『5分の4』を原則にして、解体費用の積み立ても義務化する必要がある」と指摘する。

 以上、朝日新聞 2019年5月10日刊より。

 


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