焦点News 排水管洗浄業界のいま 人手不足、日・祝日作業中、低価格・・・「このままではつぶれる」 洗浄作業事故に潜む問題点の解決を 居住者都合による突然の作業時間変更、未実施住戸etc. マンション管理新聞第1100号

投稿日:2019年04月04日 作成者:福井英樹 (3471 ヒット)

「事業としても会社としても限界だ」ー。排水管洗浄業者から悲鳴が上がる。人材不足に値下げ圧力、洗浄作業への無理解が加わって「業界を取り巻く環境は悪化の一途だ」と嘆く。その一方、改善の動きも見られる。洗浄業界の今を探る。

 対策① オーバーラップ洗浄の限界を知って「排水たて管特別清掃」実施を

「伸頂通気からたて管単独洗浄ができないため、専有枝管から住居たて管へのオーバーラップ洗浄を行った。居住者の都合で専有部作業の時間変更が相次ぎ、下層階より上層階へと順序よくできなかった。その結果、9階枝管合流部に上層階の汚れが蓄積してしまい10階の部屋に逆流事故が起きてしまった。」
 洗浄作業中の事故事例の一つだ。単純に洗浄業者のミスだと片付けられない。
 この事故例に洗浄業界の抱える課題が読み取れる。
 その一つが料金の低価格だ。たて管は下層階から洗浄するのが基本。当日、時間を変更されてしまうと作業ストップになる。しかし、1日の作業実施率がコストに反映されているため、受注金額を考えるとストップせずに作業が進められがちだ。
 こうした事故を予防するためには、居住者の都合で作業スケジュールが変更になった場合の精算方法を事前に決めておくことも重要といえる。
 排水管洗浄作業は居住者の在宅が不可欠。決められた時間に在宅していないとペナルティー料金が要求されるとなれば、在宅率は大幅に上昇しよう。
 前出の事故の背景にはオーバーラップ洗浄の課題もある。ただし、ある洗浄研究グループは現場検証を行っており、ある条件に基づいてオーバーラップ洗浄すれば洗浄効果が得られているケースもある。
 共用たて管と専有部枝管を分離して洗浄することで、洗浄品質を上げることがよりよ良い方法なのだが、大幅に上昇するコスト問題がネックとなっている。

 対策② 日曜・祝日、予備日を設ける場合は割増料金請求

 ある洗浄業者はたて管が鋳鉄管や水道用亜鉛めっき管(SGP)などの金属管が使用されている物件を中心に5年ごとの「排水たて管特別清掃」を提案、実施している。
 「塩ビ管と違って金属管は管内部に汚れが付着しやすく、オーバーラップ洗浄では十分な洗浄効果が期待できない。排水力不足による排水があふれて下階への漏水事故に至る可能性もあるので、排水たて管を対象とした特別清掃を提案している」と話す。
 既設点検口および既設清掃口の状態を確認の上、既設点検口が設置されていない場合は清掃口も併せて新設する必要がある。
 特別清掃をすることで漏水事故は大幅に減少できるとするが、コスト面から管理組合、あるいは管理会社の理解が必要となる。

 対策③ 老朽化原因の作業事故は管理組合の保険で対応を
 在宅率の問題も前出事故の背景にあると述べたが、清掃作業が土・日・祝日に集中している状態も業界が抱える問題だ。「スタッフ募集の一番のネックが土・祝日勤務。現状のままだと人が集まらず会社の存続もままならない」と話す業者も。
 「当社は積極的に平日に作業をお願いしている。実際、平日に実施してもらうと、土日の実施率とほぼ変わらずに作業ができている」
 この業者は見積書提出の際は「日曜・祝日施工、予備日を設ける場合は別途割り増し料金を申し受けます」と記入し、平日実施を促す努力をしている。
 ところで、洗浄作業時の事故は契約保険の支払い増にもつながり、会社経営を苦しくする。「洗浄作業が原因でなく、経年劣化による漏水にもかかわらず当社の保険での対応を迫られるケースも少なくない」と嘆く業者もいる。
 そこで、責任を明確にするため、「作業中、配管腐食など施設の老朽化が原因で損害が発生した場合、弊社の工事賠償保険では事故の保証はできません。貴殿の賠償保険、もしくは専有部の賠償保険にて対応をお願いします」と契約書に明示している業者もいる。
 建物の排水環境の安全確保には管理組合、管理会社、そして専門の洗浄業者の良好なパートナーシップが不可欠。管理組合、管理会社には排水環境への深い理解が求められている、といえよう。

雑排水管洗浄工事契約書(要項書より一部抜粋)

  1)共用部洗浄箇所 たて管・横引管・会所
  2)専有部洗浄箇所 流し台・洗面所・浴室・洗濯
  3)雑排水管洗浄工事は年1回とします
  4)専有部全戸精算 1年詰まり保証
   (異物の混入など、自然な詰まり以外は。保証対象外です)
  5)日曜・祝日施工・予備日を設ける場合は、別途割り増し料金を申し受けます。
  6)施工工程は、弊社に一任していただきます
  7)住戸内にて水・電気を無償にてご提供願います
  8)作業中の駐車スペースは無償貸与願います
  9)作業中、配管腐食等施設の老朽化が原因で損害が発生した場合、弊社の工事賠償保険では事故の保証はできません
    貴殿の賠償保険、もしくは専有部の賠償保険にて対応をお願いいたします。
 10)施工時、不在宅(未施工住宅)で発生した詰まりの事故に関する賠償については、貴殿にて賠償保険での対応をお願いいたします。
 11)水洗浄は、排水口が露出している場合とします
 12)その他の事項につきましては、御協議の上決定します 

   

   意外な詰まり物   ~原因はマウスウオッシュ

  洗面排水の詰まりで出動したら、原因は虫歯や歯周病の予防に効果があるといわれている「マウスウオッシュ」だった!最近洗浄業者から聞く話だ。一般社団法人全国管洗浄協会のホームページでも。警鐘を鳴らしている。同ホームページでは「マウスウオッシュでうがいした後、十分な水を流さないことにより、トラップ内に停滞し、マウスウオッシュにタンパク質を分解する働きを持った成分が含まれるため管内に付着したスケールを分解し、毛髪などを含んだ形で再形成し、ゲル化した付着物に形を変えてとどまると考えられる」としている。
  対策は「うがいした後は十分な水を流すこと」。


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