大阪北部地震 エレベーター 800台が故障 約6万6000台が停止 4日以内には大半が復旧も 社会資本整備審部会で報告

投稿日:2018年08月30日 作成者:福井英樹 (2394 ヒット)

 6月18日の大阪北部地震で故障したエレベーターが800台に上っていたことが、8月3日の社会資本整備審議会建築分科会建築物等事故・災害対策部会(深尾精一部会長)で明らかになった。一般社団法人エレベーター協会会員各社の報告によるもので、地震で約6万6000台が停止し、339台で「閉じ込め」が発生していた。国土交通省は補修事業各社に救出体制の検証や見直しを求める方針だ。

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 部会では日本エレベーター協会会員が保守管理を行う大阪・京都府、滋賀・兵庫・奈良県の2府3県内におけるエレベーター保守台数計約12万2000の被害状況が報告された。このうち、地震で停止した台数は、およそ半数にあたる約6万6000台。そのうち地震時管制運転装置が取り付けられていたのは約3万3000台だった。
 国土交通省は「強い揺れの本震を感知したことによる同装置の作動や停電によるものが多い」としている。部品が破損するなどしたエレベーター以外は地震発生から2日以内に復旧し、部品が破損した基についても4日以内には大半が復旧していたという。
 閉じ込めが起こったのは339台。このうち、同装置が取り付けられていながら閉じ込めが発生したのは155台と5割近くを占めた。震源から距離が近い場所では、初期微動から本震到達速度が速く、同装置におけるP波感知効果がないため、最寄り階着床前に本震感知器が作動し停止した、といった点を原因として考えられるとした。
 ただ、閉じ込めがあったエレベーターが設置されている建物の分布状況は把握されていないため、同省は詳しい原因などを「これから調べる」としている。
 閉じ込めからの救出時間は通報を受けてから平均約80分。約180分で全体の9割程度は救出完了していた。
 故障が発生したのは約800台。主な故障はガイドレールからのガイドシュー外れ、主ロープの損傷だとした。
 今後の閉じ込め対策については、初期微動を感知し最寄り階に着床した後、本震の到来前に運転を再開しない機構を開発するなどの案が挙げられた。
 閉じ込め被害者の早期救出については救出者に危険が及ばない場合に、補修事業者以外でも対応できるように、研修などの実施が提案された。
 故障に対しては、主要支持部分の構造計算・釣り合い重りの脱落防止等の耐震措置が義務化された2014年4月以前に設置されたエレベーターの耐震化について取り組みを促進する、としている。
 当日はエレベーターが停止した際の復旧の優先順位も提示された。最も優先されるのは「閉じ込め救出」で、以降は病院など弱者が利用する施設で停止したエレベーターの復旧が第一に優先される。いわゆるタワーマンションが含まれる「高さがおおむね60メートル以上」の高層住宅は、弱者利用建物、公共性が高い建物に続いて第3位だった。
以上マンション管理新聞第1080号より抜粋。

 エレベーターは、10階程度の建物では震度が5弱程度で止まり、超高層の場合は震度4程度でも止まります。さらに、このたびの北部地震でも大阪市内の高層ビルで閉じ込め事故も起こり、3時間以上も閉じ込められた事例の報告も入っています。
 建物の揺れによってロープが振られ、周りに引っかかるとエレベーターは止まり、時には閉じ込め事故も起こります。
 地面の揺れが大きい地域では、エレベーターの揺れは一層大きくなり、より止まりやすくなります。エレベーターは先日の「中規模地震程度で止まる」と心得ていた方がよさそうです。
 現在のところ、エレベーターを安全に止めることが優先的に考えられており、避難には使えないことを前提に地震対策等を考えておくべきです。
 地震時管制運転装置のないエレベーターの場合には、地震が起きてもそのまま運転を続けるため、地震の際には、すべてのボタンを押してどこかの階に止まったら、急いで降りるという一般の人にもできる自衛策がありますが、使用階のみに停止するように設定してあるエレベーターの場合は、地震時には当該設定を解除しない限り、最寄り階に停止することはできません。マンションの場合は最寄り階停止が最優先です。
 エレベーターは消防法で防火構造になっており、最新のエレベーターには、扉が防炎構造のものさえあります。火災さえ発生しなければ、エレベーター内は比較的安全で、エレベーターシャフトは一般的に4本柱の中にある為、他の共用部分より強固な構造になっています。建物が破壊されてもエレベーターシャフトだけは建っていることが過去においてもありました。
 また、最新型のエレベータは箱の中に簡易トイレ、携帯ラジオ、ホイッスル、小型懐中電灯、乾パン等が設置されている場合もありますが、地震時に閉じ込め事故に遭った場合を想定して、停電状態の真の闇の状態の中で、慌てないように、日頃から超小型懐中電灯や助けを求めるための携帯ホイッスル等は、キーホルダー等に付けておくなどのリスク管理をしておくことが大切です。100円均一等でも販売されていますので、非常時の際にどれだけ心強い味方になるか測り知れません。助けを求めて、大声を出し続けることは体力的にも不可能であり、人間の声より、笛の高音は、外部に聞こえやすく、救援者に比較的気づいてもらいやすくなります。
 エレベーターを再稼働するには管理会社の点検と整備が必要です。南海トラフ地震や首都直下型地震等の大地震が起きた場合、交通網が途絶えている中で、修復活動は、ほとんど、期待できませんし、停電状態の通電されていない状況では、当然のことながら、点検は不可能です。また、使用開始までに何カ月も待たなければならないことも考えられます。
 上記記事にもありますように、2009年から法制化された「地震時管制運転装置」ですが、閉じ込め事故が発生したエレベーターの半数のマンションが当該装置を付けていました。
 しかしながら、古いエレベーターは耐震改修が必要です。後付けで、地震時管制運転装置をとりつけることも可能であり、地震に対する自衛手段として最低限必要だと思われます。地震を感知して最寄り階に停止する、ロープが外れない、からまない、自動診断・復旧システムが設置されているなど、自分が住んでいるエレベーターが未改修のままであれば、対策を練ることが喫緊の課題となります。
 余談ですが、築30年以上のマンションの管理組合の方で、そろそろ、エレベータの更新(モダニゼーション)等を考えておられる管理組合の方は、当業界は大手5社で99%を占める生涯チャンピオンの寡占市場です。管理会社から提案されてくる、いわゆる相場価格に惑わされないように慎重な検討が必要です。その際は、第三者である知識の豊富な外部専門家等にご相談されるのが賢明な策ともいえます。
 

 


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